BMJ誌2019年(クリスマス特集号)掲載にあったアキレス腱再断裂に関する記事です。
アキレス腱断裂での手術療法は、保存療法に比べ再断裂のリスクが有意に低いのですが、その差はごくわずかであり、
他の合併症のリスクが高いことが、オランダの研究で検討でされました。
アキレス腱断裂は遭遇する頻度が高く、最近の研究では発生率の増加が報告されているようです。
研究
研究グループは、アキレス腱断裂の手術療法と保存術療法における
①再断裂、②合併症、③機能的アウトカム
を過去の文献から系統的に解析を行いました。
手術療法には低侵襲修復術・観血的修復術があり、
保存療法にはキャスト固定・機能装具があります。
アキレス腱断裂以外の合併症は、創感染、腓腹神経損傷、深部静脈血栓症、肺塞栓症などがありました。
これらを医学関連データベース(2018年4月)を用いて、アキレス腱断裂の手術療法と保存療法を比較しました。
結果
1万5,862の症例が解析に含まれてその内訳は、手術療法が9,375例、保存療法は6,487例でした。
全体の加重平均年齢は41歳(範囲:17~86)、男性が74%で、フォローアップ期間は10~95ヵ月でした。
①再断裂率(29件[100%]で検討)は、手術群が2.3%と、保存療法群の3.9%に比べ有意に低く、
早期可動域訓練による加速的リハビリテーション時の再断裂率(6件[21%]で検討)は、手術群と非手術群に差を認めませんでした。
②合併症の発生率(26件[90%]で検討)は、手術群は4.9%であり、保存療法の1.6%に比し有意に高かく、合併症発生率の差の主な原因は、手術群で創傷/皮膚感染症の発生率が2.8%と高いことでした(保存療法群は0.02%)。
保存療法群で最も頻度の高い合併症は深部静脈血栓症(1.2%)でした(手術群は1.0%)。
③スポーツ復帰までの平均期間(4件[14%]で検討)にはばらつきがみられ、
手術群で6~9ヵ月、保存療法群では6~8ヵ月の幅があり、仕事復帰までの期間(9件[31%]で検討)にも、両群間に差が認められませんでした。
以上より著者は、アキレス腱断裂の手術療法と保存療法の再断裂のリスクは低いと結論づけております。
私はアスリートが手術療法を選択することが多いように思います。
特にトップアスリートに限っては現役復帰の早さに驚かされることがあります。
怪我をする前の身体の状態やトレーナーなどの医療者が身近にいると機能的アウトカムは早くなると考えられ、
環境を考える余地がありそうです。