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整形外科から接骨院へ患者が移る背景

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慢性疼痛で最も多い部位は腰です。

ある調査結果によると、慢性的な腰痛により日常生活に欠かせない活動に支障を来していた事がある患者が9割近くいることが分かりました。

物を持ち上げたり立ち上がり、しゃがむといった基本動作と、痛みがひどい時期には起床や睡眠に半支障を来していました。

さらに、3割の人が仕事を辞めたいと思ったことがあるほどQOLに大きな影響を及ぼしていました。

そのような苦しみを抱えているにもかかわらず、整形外科で治療を受けている慢性疼痛患者はたった19%で接骨院などの民間療法が20%、まったく治療を受けていない患者が半数以上います。

受けた治療の種類はマッサージが31%と最も多く、薬物療法22%、物理療法16%でした。

整形外科の治療は満足か?

「慢性腰痛の治療で整形外科の治療に満足しているか?」という質問に満足している患者は40%ほどでした。

治療に満足していない患者の60%は、医師に不満を伝えれていませんでした。

整形外科が考える患者の満足度は、実際の患者満足度よりも若干高く、整形外科医と患者での意識差があることが示唆されました。

患者が治療に満足していない理由として一番多かったのは、

「期待していた鎮痛効果が得られなかったから」でした。

医師に不満を伝えない理由は、

「治療法を変えても、これ以上痛みは軽減しないと思うから」、「相談しても治療法を変えてくれなそうだから」

と患者側が諦めていることが調査から分かりました。

接骨院には振るいから落ちた患者たちが通う

慢性疼痛の原因は、器質的疾患が特定される場合もあれば、感覚・情動など複雑な要因が絡み合い、臨床上完全に特定されない場合があります。

そのため、慢性腰痛症の治療も単独ではなく、さまざまな選択肢を組み合わせて行うことが重要です。

治療を行ってみても、痛みをゼロにできる患者もいれば、これ以上悪化しないよう現状維持という患者もいます。

このことを整形外科医は知っていますが、患者は十分な説明を受けていないことがあります。

そこで意識差が生まれてしまい「期待していた鎮痛効果が得られない」と患者は治療に満足できなくなります。

そして、整形外科に診せるのをやめ、マッサージをしてくれる接骨院などの民間療法に頼ったり、治療自体をやめてしまったりします。

慢性腰痛症患者の治療満足度を向上させるには、まず治療者が患者一人ひとりとコミュニケーションをとり、患者の痛みの程度と生活の支障の程度を判断する必要がありますが、医師が多忙なために患者に十分な情報が伝わっていません。

接骨院では整形外科医より敷居が低いので、患者は気軽に治療者と話すことができます。

エビデンスに基づいた治療を行うことができるのは医師だけなので慢性腰痛症に苦しむ患者に、「現在の治療に満足しているか」ということを医師だけでなく看護師や理学療法士など医院側から積極的に問いかけたり、治療のゴール設定をする事で患者の治療意識を高めると、接骨院などの民間療法への患者の移動は減る事になってしまうでしょう。

以前勤めていた整形外科での院長はスタッフの教育をしっかりされていたので、患者の流出がほとんど無かったです。

今、開業して通院する患者さんはほとんど整形外科に行かれていて、レントゲンと湿布だけだったと治療に不満を言っています。

 

補足

オーストラリア・クイーンズランド大学は、腰痛持ちの女性が治療者(整形外科や接骨院、整体院など)を選んだ理由について調査した結果、治療アプローチや治療法もしくは治療の科学的根拠とは無関係であることを報告しました。

さらに正式な資格よりも、有効性やその治療経験の事例報告が大きく影響することも挙げています。

オーストラリアにおいても女性の腰痛患者が増加してきているといいます。

腰痛患者は代替医療を含む幅広い治療オプションを利用することができ、その利用パターンについてはすでに報告がされています。

60~65歳の慢性腰痛を有する女性患者を対象に、腰痛の際に治療者を選択するにあたっての要因を調べる目的で50回の面接を実施しました。

結果、腰痛持ちの女性が治療者を選ぶ際に影響を受けている主な要因は、

「治療に精通しているもしくは経験豊富である」

「社会的ネットワークからの推薦」

「地理的な近さ」

「治療者の資格と証明書」

の4つでした。

治療アプローチやエビデンスの存在は治療を選択する意思決定の主たる理由としてはやはり挙げられませんでした。

 

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