整形外科で尿管結石の患者さん
整形外科臨床経験で1度、泌尿器疾患由来の腰痛を見逃した事があります。
その日は忙しかったので、患者さんへの対応が機械的になってしまっていたのかもしれません。
ただの言い訳です。
患者さんは、20〜30代の男性だったと思います。
現病歴ははっきりとは覚えていません。
腰痛は安静時にもずっとあるわけでなく、確かに運動痛がありました。
身体を動かした後はずっと痛いという事も、訴えておられました。
それはよくある事なので、腰痛の発生機序などを一通りで説明して、気をつける生活動作も指導し、お帰りいただきました。
後日、電話で症状をお伺いしたところ、別の病院で尿管結石の診断を受けたということを聞きました。
泌尿器疾患由来の腰痛は見逃さないよう心がけていたのでショックでした。
私自身が尿管結石で何度も腹部、腰背部の痛みを経験し、関連痛なども分かっていたので、判別できる自信があったのです。
泌尿器疾患の腰痛と原因
腰痛の原因となる泌尿器科的疾患の中では、尿路結石の頻度が最も高いです。
腎内の結石が、腎盂尿管移行部や尿管に嵌頓して、尿の通過障害により腎盂内圧が上昇し、尿路壁の伸展と腎盂、尿管が攣縮を起こし、これが腰背部痛となって現れます。
尿管を収縮させる副交感神経は、夜間に優位に働くため、痛みは夜間に起こりやすいです。
疫学
男性に圧倒的に多く、年齢層としては20~50歳代に多いです 。
頻度は1000人に1人ぐらいです。
検査と診断
肋骨脊柱角部に殴打痛があります。
レントゲンでも結石の像は写ります。
でも、医師の先生方は大抵エコー検査をされています。
結石はどんなの?
尿路結石のなかでも圧倒的に多いのが『シュウ酸カルシウム』を主成分とするものです。
尿中にシュウ酸が増えることが最も悪影響を与えます。
金平糖状あるいは表面がギサギサな形になるので、小さくても尿菅に引っ掛かりやすく、排出されにくいのが特徴です。
食べ物・飲み物で気をつけることは
シュウ酸は、
「コーヒー、紅茶、ほうれん草、たけのこ、小松菜、大根おろし」
に多く含まれます。
これらの食品を食べないようにするというわけでなく、食べ方に気をつけて頂ければ大丈夫です。(後述)
その他に、長期間ビタミンCを摂りすぎると、ビタミンCが体内で代謝されてシュウ酸が作られてしまいます。
ビールをたくさん飲むと良い、ということを耳にしますが、それは間違いです。
以前はビールを飲んで自然に出すという考えもありました。
私も、罹病した時に他人から言われました。
しかし、ビールはアルコールなので、量を多く飲んだ後は脱水になりやすく、尿が濃くなります。
ビールだけに限らず、アルコールの多飲は避けなくてはいけません。
食べ方で気をつけることは
シュウ酸を多く含む食物を食べる時に、同時にカルシウムを含む食物を摂ると良いです。
「アレッ?尿中に『シュウ酸カルシウム』が多いと結石ができやすいんじゃないの?」
と思われるかとおもいますが、まず、腸管内でシュウ酸とカルシウムが結合して、『シュウ酸カルシウム』が便として排泄されます。
これで、尿中に排出されるシュウ酸を減少させることができます。
脂肪が多い食べ物を取っていると、脂肪が分解されてできる脂肪酸が腸内に多くなり、シュウ酸より先に脂肪酸とカルシウムが結合して排せつされてしまうので、腸内のカルシウムが減少してしまいます。
そうなると、過剰になったシュウ酸が腸から吸収されてしまい、尿中にあるカルシウムイオンと結合し、結石になってしまうのです。
食事で摂取したカルシウムやシュウ酸の尿中への排出は、食後2~3時間でピークになります。
腎臓の働きが正常な人では、就寝中の尿量は減少して濃縮された尿ができます。
夜遅く食事をとると、尿中へのシュウ酸の排出と濃縮された尿が生成される時間帯が重なり、結石ができやすくなるのです。
痛み止め以外の薬は?
結石を溶かす薬というのは無いらしいです。
私も、医師の先生に
「結石を溶かす薬を投与して下さい」
というと、
「そんなもん、無い!」
と、怒り気味に言われました。
よほど多くの人にこの手の質問をされているのでしょう。
尿で排出するか、手術しか方法は無いのです。
では他に方法は無いのでしょうか?
私自身が飲んで良かったのがウラジロガシです。
昔から徳島地方に伝わっていた有名な民間薬で、結石類を溶かすということで商品化もされていて、サプリメントや、お茶があるみたいです。
私も、勤務先の看護師に勧められて知りました。
私は「ウラジロガシ茶」を飲みました。
気のせいだったかのかもしれませんが、痛みが和らぎ、ある日を境に痛みが無くなりました。
(尿中での結石の排出は確認できませんでした。)
その有効性は最近になって確かめられています。
泌尿器科の先生にウラジロガシのお茶を飲んでいます。
と言うと、
「ふーん、良いって聞くね」という感じでした。
知らなかったのか、その有効性を疑問視しているのか分からない反応でしたが、もし、苦しんでいる方で、手術しかないと思っているのであれば、一度試してみる価値はあります。
2019年8月追記
オートファージの機能低下
オートファージとは細胞が不要なタンパクを自分で分解する機能のことです。
2016年に東京工業大学の大隅先生がこの仕組みを解明しノーベル医学生理学賞を受賞しています。
先日、新聞に載っていた記事がありました。
このオートファージの機能が低下することで尿路結石を引き起こしているという事が分かったそうです。
オートファージの機能が低下している例では、特定のタンパク質の量が通常より少なくなり、
これとは別のタンパク質が活性化してしまうそうです。
そこで、マウス実験でこのタンパク質を標的とした薬を与えると結石の形成が抑えられたそうです。
オートファージと結石の関係が次第に解明されており、
結石持ちの患者には、機能低下を阻止する薬の開発が待たれます。