膝蓋大腿関節の適合障害は"広義の膝蓋骨脱臼"とされていて、いくつかに分類されています。
まず考えつくのは膝蓋骨不安定症ですが、反復性膝蓋骨脱臼と同義にされているのをよく見かけます。
膝蓋骨不安定症は、運動や軽微な外傷で膝蓋骨脱臼や亜脱臼を発症させるものの総称で、脱臼をする前段階で不安定感を持つものです。
外傷の既往がなく、ある一定の膝屈曲角度において常に膝蓋骨が脱臼する「習慣性膝蓋骨脱臼」や、
膝蓋骨が常に脱臼している「恒久性膝蓋骨脱臼」などがあり、表のようにしっかりと区別されています。
膝蓋大腿関節の適合障害 |
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1、恒久性膝蓋骨脱臼 |
2、習慣性膝蓋骨脱臼 |
3、再発性膝蓋骨脱臼 |
4、膝蓋骨亜脱臼症候群 |
5、不安定膝蓋骨 |
6、Excessive lateral pressure syndrome(ELPS) |
7、その他 |
この膝蓋大腿関節の適合障害の分類の1つに
ELPS(Excessive lateral pressure syndrome)があります。
これはLPFL(外側膝蓋大腿靱帯)付着部障害であり、これは他覚的に捉えるのが難しく、診断に難渋されます。
私が整形外科に勤務していた時に、この診断名がついた患者さんを見ることはありませんでしたが、
このような疾患があると勉強会で知る事ができました。
概念・病因
膝蓋大腿関節痛の発現において多くの要因が働いていると考えらます。
膝蓋大腿関節の外側面に異常な圧迫力が生じる膝蓋骨外側支帯の緊張の増大はその要因の1つと考えられます。
その他に大腿骨顆部や膝蓋骨の形態異常、内側支持機構の破綻などが考えられます。
疫学
海外の文献には思春期から大人まで起こりえるとありました。
私が見た文献の症例は中学、高校生が多かったように思います。
有痛生分裂膝蓋骨と間違えてもおかしくない年代も含まれています。
症状
階段昇降、しゃがみこみ動作など膝関節屈曲位での動作において膝蓋骨周囲に疼痛が生じます。
画像診断
X線検査では外側支帯に繊維化や石灰化(小骨片)、骨棘などが見られます。
CTにおいてはアライメント異常(大腿骨顆部に対し、脛骨顆部が外旋している膝回旋角やsulcus angle)の確認で疾患の判別を行う事ができます。
鑑別診断
圧痛が内側大腿脛骨関節裂隙や膝蓋骨内側部に認める事があるので内側半月板損傷との鑑別が必要になります。
理学所見
患者の大腿四頭筋をリラックスさせた状態を作り、膝関節を伸展位として膝蓋骨を動かした際の動きを見ます。
passive patellar tilt:膝蓋骨の傾斜を徒手的に強制するテストで、内方に傾くように動かした時に傾斜が生じなければ、外側支持機構の緊張を示します。
同様に膝関節30度屈曲位で膝蓋骨を内方に押した時の外側支持機構の硬さも見ます。
正常であれば、内方でも外方でも同様に動きますが、外側膝蓋支持機構が硬い場合には内方への動きが制限されます。
治療
LRR(Lateral reticular release)外側膝蓋支帯解離術で緊張した外側膝蓋支帯を切離して
膝蓋骨を外方へ牽引する力を緩めて外側大腿膝蓋間の減圧を図ります。
緊張して肥厚した外側膝蓋支帯の知覚神経に対する脱神経では疼痛緩和が期待されます。