先日、80歳代の患者さんで、ほんの数年前に腱板断裂をしたので手術をしたという方がおられました。
その年齢で手術治療を選択されたことに驚きました。
手術後にはお決まりの関節拘縮が起こってしまい、ADL的にあまり改善されていないということでした。
活動性の低い患者さんに腱板の手術をすると手術前より悪くなっているような事があります。
同様に30歳代の患者さんで投擲種目の競技をしていて、腱板断裂したので競技を続けるために手術をしたのに、手術後に「投擲種目は無理」と医師に言われた方も来られました。
当院に来る前には外転・外旋が全く出来ていなかったのですが、手術をした別の医師からサイレントマニュピレーション授動術を受けて可動域が改善したという事でした。
整形外科勤務時には、30歳代女性がスキーで転倒し、腱板損傷し他院でMRIを撮って筋(スジ)切れていると言われて転医された方がいらっしゃいました。
確かにMRI上では切れているように見えました。
主訴が「痛みで腕を挙上できない」というものだったので、腱板トレーニングと肩関節の可動域訓練で様子を見ながらリハビリしていましたところ、徐々に回復していきました。
可動域は屈曲90度を獲得できた程度でしたが、本人はそれでスキーができるからと満足して、またスキーに行かれました。
スキーを楽しんでいたところ再び転倒して肩を捻ってしまい、
その時に「ブチブチ」っと音がして、本人は「また肩を怪我してしまった」と思ったのですが、なんとそれから肩が挙がるようになったそうなのです。
転倒の衝撃で肩関節の拘縮していた部分が解離してくれたそうなのです。
接骨院では麻酔を投与することができません。
この例のように、1回の施術で固く拘縮してしまった肩関節を炎症を助長させる事なく動かせるようにするのが、接骨院で働く人間が追い求めるている技術なのです。
サイレント・マニュピレーションとは
頚部から腕への神経根周囲(C5,6,7)に麻酔薬を投与して行う無痛の授動術をサイレント・マニュピレーションと言います。
①肩関節外転位で外旋を加えながらゆっくりと最大挙上位まで持っていいきます。
この時、腋窩の関節包が下方から前方に向かってミシミシと断裂するのが触知されます。
②次に外旋しながらゆっくりと下垂位に持っていきます。
この時前方の関節包が下方から上方にミシミシと断裂することが分かります。
③水平内転で後方が断裂され、
④内旋を加えると後下方の関節包が断裂されます。
⑤最後に伸展・内旋を強制すると小さくなった肩峰下滑液包の破れる感じが触知されます。
以上の操作で関節包が全周性に破断されます。
この授動術を受けると、肩峰に大結節が衝突しているような場合でも、大結節がスムーズに肩峰下を通るようになります。
補足
前方走査エコー
上腕二頭筋腱の肥大と亜脱臼は日常診療で多く見られ、間接的に肩甲下筋腱の断裂が示唆されます。
外上方走査エコー
肩峰下滑液包炎ではPeribursal fat(腱板と三角筋の間にある高エコー像)と腱板との間の水腫が特徴的になります。Peribursal fatの下に肥厚した滑膜や絨毛状の滑膜増生も観察されます。
後方走査エコー
変形性関節症が分かり、骨頭の骨輪郭が不整で関節窩の軟骨が消失します。内旋位で関節水腫がより明瞭に観察されます。