8年間の整形外科での臨床経験で遭遇したことはありません。
上腕骨外側上顆炎の勉強をしていた時に、難治性のものに滑膜ヒダ障害※(synovial fringe impingement)が併発することがあると知り、この疾患の存在を知りました。
※滑膜ヒダ障害は、関節包に慢性の機械的刺激や外傷が加わるものや先天性のもの、肘関節運動時に不安定性があるため関節裂隙内で滑膜炎を起こして、肥厚した周囲の関節包と滑膜が入り込んで半月板状(線維性軟骨様の硬度)となるものです。
弾発肘の発生機序
関節の内と外に原因があるものの2つに大別できます。
関節内に原因があるもの
肥厚した輪状靭帯が腕橈関節に嵌入するもの
屈曲位では橈骨頭にある輪状靭帯が伸展していくと一部が腕橈関節に嵌入して弾発現象が生じます。
伸展位から再び屈曲していくと腕橈関節内に嵌入していた輪状靭帯が橈骨頭に整復されてその時に弾発現象が再び生じます。
肥厚した滑膜ヒダが腕橈関節に嵌入するもの
腕橈関節内において滑膜ヒダと橈骨頭の接触面は、前腕を回外位から回内するにつれて橈骨頭の前外側から後内側に移動します。
この接触面の移動時に滑膜ヒダが腕橈関節内に引き込まれます。
前方ヒダでは屈曲回内位で腕橈関節に嵌入して、後外方ヒダでは伸展回内位で腕橈関節に嵌入します。
関節外に原因があるもの
上腕三頭筋の前方脱臼
一般的には、肘関節屈曲時に上腕三頭筋が上腕骨内側上顆を乗り上げる際に弾発現象を起こします。
原因としては、上腕三頭筋の付着部の異常によるもので、尺骨神経を伴って脱臼することもあります。
上腕骨内側上顆だけでなく、上腕骨外側上顆での脱臼例もあります。
外骨腫や高度な内・外反肘など
筋腱の走行上に外骨腫による骨の盛り上がりがあり、そこに引っかかり弾発を起こすものがあります。内・外反肘は筋肉の走行異常による弾発がでます。