頚部・胸・腰

高血圧と胸部痛

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日曜日の朝の診療中に、通院されている80歳過ぎの患者さんから電話がありました。

血圧が200あり、左胸が痛いというのです。

既往で心疾患があるのは聞いていませんでした。

血圧が高いという話も聞いていません。

心配になったので、偶然実家に来ていた救急をしている兄にこの事について尋ねました。

すると

「右と左で血圧を測って、差が大きかったら病院に行った方がいい。」

と言ったので、その事を患者さんに伝えました。

しばらくすると

「右が218で左が180位でした」

と、折り返し連絡がありました。

これを再び兄に伝えたら、

「30も差があったらおかしいから、病院に行くように」

と言ったので、家族の人に病院へ連れて行ってもらうように伝えました。

 

何が疑われるのか?

突然に胸痛がある時には、様々な疾患が疑われますが、大動脈解離の上肢の血圧左右差は、特徴的な所見です。

大動脈は心臓から出ると

腕頭動脈→左総頚動脈→左鎖骨下動脈

の順番に枝を出します。

解離部位が腕頭動脈の枝に及べば、右上肢が虚血状態となり血圧が下がます。

腕頭動脈以降に解離が生じると左上肢の血圧が低くなります。

左鎖骨下動脈よりさらに下方で解離が生じると、下肢の虚血が生じるため、下肢の血圧低下や、対麻痺を認めることもあります。

臨床において、高齢の方では上行大動脈を含まないStanford B型が多く、左側の血圧低下を認めることがあります。

文献において大動脈解離の血圧左右差については、重要な手がかりとなりますが実際はその頻度はそれほど高くなく20%以下と報告されています。

しかし、胸痛に伴って出現する血圧左右差は診断的価値が高いとも言われ、重要なことは、解離部位にもよりますが、致死的状態に陥る危険性の高い疾患であるということです。

とくに重篤なStanford A型では、上肢の血圧左右差は右上肢のほうが低くなることが多く、早急な治療が必要となります。

 

結果

その後、何の連絡もなかったのですが、予約の日に患者さんにご来院頂きました。

どうやら心配事が重なり、それがストレスになり急激に血圧が上がったとの事でした。

大事にならなくて良かったです。

寒い時期では高齢者の血圧に気をつけなくてはいけないと改めて思いました。

 

家庭血圧と診察室血圧のどちらの指標をもとに治療するべきか?

これはよく質問されましたが、

答えは、家庭血圧を指標として降圧治療をするべき。

らしいです。2014年からすでにそのようになっているみたいです。

家庭血圧を指標として降圧治療をすると、長期的予後をよく反映していることが分かっているみたいです。

 

 

 

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