平泳ぎの時には膝と股関節に強いストレスがかかります。
文献によると、平泳ぎ選手の約80%が過去に一度は膝に痛みがあり、約40%が常時に痛みを抱えているという事らしいです。
これは、両脚で水を挟み込むウィップキックの時に股関節が内転され、その時に膝関節の側副靭帯に強いストレスがかかるとされています。
整形外科で勤務していた時に、同様の過程で明らかに膝内側の側副靭帯を痛めている患者さんがいらっしゃいました。
swimmer's knee「水泳膝」という診断で、患者さんに病態を説明しました。
しかし、水泳選手なのでテーピングなどの処置ができず、治療方法に困った経験がありました。
自分に出来ることは何だろうということで色々と考えましたが、力及ばず結局は良い結果が得られませんでした。
予防と痛みを和らげるには
この平泳ぎの泳法は、膝の内側の構造に横方向の力が繰り返しかかります。
この繰り返しかかる力を減らす方法が予防に繋がります。
しかし、平泳ぎではこの動きを繰り返さなくてはいけないので、この力を完全に減らそうとするのは非現実的です。
そこで、股関節の可動域を広げたり、股関節周囲や体幹の筋力を上げることでストレスを分散させて膝関節内側にかかる力を減らしていかなければいけません。
スイマーには臀筋の発達が不十分な選手が多く、トレーナーは臀筋の強化に力を入れています。
臀筋の効率的なエクササイズとしては、
中臀筋には側臥位での股関節外転運動、
大臀筋には片脚スクワットや片脚デッドリフト、
が効率的とされています。
股関節周囲の軟部組織のケアを行うことも重要で、筋膜リリースなどの施術を受けると軟部組織の機能が改善します。
筋膜の癒着を剥がすことで股関節周囲の筋肉のこわばりも取れ、結果として股関節の関節唇に加わるストレスを和らげることになります。