この疾患の患者さんは意外と多いです。
しかしそれ程”メジャー”なものとして知られていません。
整形外科の本でも取り上げられることもありません。
外観の変形もありますが、外反母趾のような酷さもないので我慢してしまうことがあるのかもしれません。
主訴
80代女性で、通院目的は腰の治療でした。
通院中に腰は幾分かは良くなったのですが、右膝の痛みと右足の甲の痛みがあるとの事でした。
現病歴
2〜3年前より膝の日常的な痛みが出現し、正座が出来なくなりました。
膝もしっかりと伸びなくなったが治療せず我慢していました。
外反母趾は若い頃からあったという事です。
痛みが出ることもありました。
既往
当院へ通院する半年前に自転車で転倒し胸骨骨折をして、病院にて1ヶ月の間臥床していました。
それから自転車に乗ることは無くなり、活動範囲も少なくなりました。
社会歴
息子夫婦と孫2人と同居し、家事全般と畑仕事をしています。
週1回デイサービスへ通所しています。
所見
右膝
圧痛:内側関節裂隙部、膝窩部、膝蓋骨底
可動域:屈曲130°、伸展-15°
マクマレー➕、ラックマンー、patella apprehension test➖、Ballottement testー、thomas test➕、尻上がり現象➕
右足
圧痛:リスフラン関節部(母趾側>小趾側)、同部位に骨性の隆起➕
腫張➕、発赤➖、熱感➖
可動域:底屈30°、背屈15°
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<span style="font-size: 90%;">ヒールオフからトウオフ(ターミナルスタンスからプレスイング)でのリスフラン関節部への痛み。5〜6歩歩くと痛みは無くなる。非荷重位からの歩きだしで再び痛くなる。 <img src="https://bonesetternote.com/wp-content/uploads/2018/07/risu3-1.jpg" alt="" /> </span> |
治療
運動療法は希望せず、マッサージ手技が主体で痛みを伴うことが苦手なので、過保護な施術となっている。
腹臥位での膝屈曲は45°程度で腸腰筋による大腿神経の絞扼も考えられた。
足に関しては、足底板療法を整形外科で勧められていて、靴に入れる足底板は外出をあまりしないので処方を受けるのをためらっていたので、足底板のサポーターを処方した。着け心地が良く痛みのコントロールもできている。
リスフラン関節症(足根中足関節症)
この疾患は外傷性のものが多く、1次性の変形性関節症は稀とされていて病態について詳しい解明がなされていません。
外傷性になったものは、痛みが出る時期も早く、40歳代で多くの人が外科的治療を受けるという報告があります。
外反母趾と関連がないものでは第1足根中足関節で痛みを有するものが多いとされています。
スポーツで踏み切り動作を繰り返し、中足骨を通じてリスフラン関節に強い介逹力が加わった事が原因で発症するということも言われています。
外反母趾との関係
外反母趾に伴うリスフラン関節症の報告が多くなされています。
発症する部位も第2,3足根中足関部に多いとされています。
しかしこの第2,3足根中足関節部は靭帯に覆われている事と、楔状骨間でほぞ穴が形成されているので安定した関節と言われています。
外反母趾では第1足根中足関節に異常な可動性があるために、MTP関節部での変形を形成させます。
そして足部前方のアーチも低下してくると、第2,3中足骨頭部に大きな荷重が掛かることになります。
この第2,3中足骨頭部への荷重がテコとなり、第2,3足根中足関節に影響が出て発症するのではと考えられています。
追記(2019.7.18)
リスフラン関節症の痛みが腓骨神経(浅か深かは不明)によるものという疑念が段々と明確になってきました。
根拠はないですが。私なりに。
整形外科の頃から慕っている先生に、「浅腓骨神経と深腓骨神経はオーバーラップしてる」という助言をもらいまいた。
だから『臨床的にはっきりとした深腓骨神経障害の症状を出すのは少数』で、浅腓骨神経と深腓骨神経の症状が混在して出るという事です。
この患者さんが足関節の底屈で痛みが出ると聞いて、深腓骨神経障害の固有領域への知覚障害をすぐに確認しましたが、そういったものはありませんでした。
これで納得、合点がいきます。
患者さんは最近、足関節の背側まで痛みが出始めています。
神経の修復が起きているのかもしれません。
症状が出るときと出ない時があり、先日はひどい状態でした。
ヒールパッドで様子を見るしかありません。