頚部・胸・腰

脊髄係留症候群(Tethered spinal cord syndrome)

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この疾患の患者さんを整形外科勤務時に診たことがあります。

患者さんは20代女性で結婚を控えているといっていました。

主訴は足の痛みでした。

なぜ痛いのかというと、この患者さんは踵を床につけられないので常に爪先立ちなので、前足部が痛いという事でした。

私は「なんで踵をつけられないのですか?」と尋ねると患者さんは「踵を下に着けようとすると後ろに倒れる」と答えました。

「・・・?。踵をつけて立てないんですか?」ともう一度尋ねると、

患者さんは「両足とも足首が上に曲がらないんです」と答えました。

そんなはずは無いと思い、椅子に座った患者さんの足を持ち足首を反らせ(伸展)てみました。しっかりと反っています。

「しっかり動いていますよ?」と尋ねると、「膝を伸ばすとダメなんです」と答えました。

確かに膝を伸ばすと足首は上に反りません。

「いつからですか?」と尋ねると、子供の頃から、と答えました。

「子供の頃からずっと爪先立ちなんですか?」と尋ねると、「そうです」

と答えが返ってきてびっくりしました。

子供の頃に背骨の病気と言われ、しばらく様子をみようと言われてそのまま大人になってしまったみたいです。

結婚をするのでとりあえず足の痛みを何とかしたいと言う事でしたが、腰の方を何とかするべきなのではと思いました。

ちなみに結婚相手はこの事を知らないと言っていたので、それにもびっくりしました。

 

脊髄係留症候群とは

脊髄下端は円錐状になっていることから脊髄円錐と呼ばれ、下端からは終糸と呼ばれる線維組織が伸びていて尾骨に付着して脊髄を固定します。

脊髄円錐の高さのレベルは、正常では第2/3腰椎の間より上にあります。

出生時には第3腰椎の高さに脊髄円錐があり、成長に従って上方にあがっていき、成人では第1腰椎か第2腰椎の高さになります。

脊髄係留症候群はこの発達とともに脊髄円錐が上昇するのが阻害されて下の位置にあることです。

第3腰椎から下側にある場合には、低位円錐と呼ばれ脊髄係留が疑われます。

これは、皮下から硬膜の内部まで繋がっている脂肪腫や張力が強いまま残ってしまった脊髄終糸などの存在によって脊髄が下から引っ張られるようになるためです。

また腰の曲げ伸ばしの運動で更に張力がかかるようになります。

症状

症状としてあるのは、足の運動障害です。運動障害は、下肢の末梢側で高度になります。筋力低下、筋肉の萎縮、足の変形を生じます。

出やすい神経症状は、膀胱直腸機能障害で排泄機能の障害が出ます。

これは係留される部位に近い脊髄であるため、そこの機能障害が出現します。

薬も十分な効果を発揮しないような便秘や無意識うちに尿漏れを起こすようになったり、慢性的に膀胱が膨らんで膀胱炎を繰り返したりします。

 

治療法

脊髄は成長とともに上へ少しずつ上がっていくのですが、脊髄脂肪腫があると脂肪腫によって皮下につなぎ留められて脊髄が上がることができず、成長とともに引っ張られます。

そして神経症状が出るようであれば手術療法が選択され、脊髄を皮下組織から切り離します。

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