鼠径ヘルニアは整形外科勤務時代に一度経験しました。
鼠径部、大腿部に痛みと膨隆を触れたのを覚えています。
腹圧は関係していなかったように記憶しています。
医院でエコー検査をし、治療法が確定できず、外科に対診に行って頂きました。
保存療法では難しいとの見解もあり、治療は手術法を選択されました。
鼠径ヘルニアとは
解剖学的に言うと、鼠径部では深層では深鼠径輪を通じて精索が腹壁から出てきて、外腹斜筋腱膜から浅鼠径輪を通じて精索が陰嚢へ通じています。
ここに、腹膜が飛び出たものを鼠径ヘルニアといいます。
つまり、分かりやすく解釈すると鼠径部の筋肉の隙間に鼠径管というものがあり、そこを通って精索がお腹の中から外へ出ています。
女性の場合はこの部分を靭帯が通り子宮を固定しています。
その通り道から腹膜(腸の一部)が出る事であります。
ヘルニアの種類
このヘルニアをイメージするのが大変でした。
整形外科の教科書を見ても実際によくわかりませんでした。
絵でイメージすると分かりやすいので、
・鼠径管後方の横筋筋膜を破って脱出するのが直接ヘルニアで、
・深鼠径輪を通じて脱出するのが間接ヘルニアです。
(鼠径管が、固い筒状のものとイメージすると分かりにくいように思います。)
この2つの鑑別は外科的には特に必要ないらしいです。(診療ガイドラインより)
しかし、
スポーツヘルニアを理解する為には、この2つの概念は知っておかなかければいけません。
疫学
内鼠径ヘルニア
高齢男性に多いです。
加齢によって腹膜が弱くなっていることが原因とされます。
肥満が腹圧を上げる因子と言われているみたいですが、BMIが高い方がリスクは低いという報告もあります。
慢性的な咳や便秘、家族歴が危険因子として挙げられています。
鼠径管の近くの組織まで侵襲がある前立腺摘出手術や下腹部の正中切開も危険因子とされています。
外鼠径ヘルニア
鼠径ヘルニアの大半がこちらのタイプになります。
子供に多く先天的なものが原因で、出生前には精巣と腹膜の交通がありますが、生まれてくる頃には閉じられるはずが、それが不完全なために強く泣くことで、腹圧が高まり、腹膜が鼠径部の方へ腫れます。
治療
柔道整復師が対応できる疾患ではなく、徒手的に治すのは難しいです。
診察時に立位で腹圧をかけて鼠径部での膨隆が確認できたら鼠径ヘルニアを疑います。
この疾患を疑ったら外科の受診を勧めるのが一番です。
いたずらに治療を引っ張ると悪化する恐れがあります。