回内筋症候群
整形外科での勤務の時にはこの疾患と手根管症候群を、どう鑑別したものかといつも悩まされました。
この疾患も、知覚障害があるためです。
圧倒的に手根管症候群が多い中、この疾患が紛れていないか不安になりました。
手がかりが患者の愁訴の
・肘周囲の痛み
・肘周囲の圧痛とtinel(神経の絞扼部を叩打すると、健側に無い痺れが出現)
・筋力低下
となります。
障害を受ける筋肉
・浅指屈筋
・前骨間神経が支配する筋肉(長母指屈筋、示・中指深指屈筋、方形回内筋)
・母指球筋の麻痺
が正中神経の走行上障害を受けます。
教科書的には「知覚障害のみで筋力の麻痺は少ない」とあります。
少ないと言うのは、全く無いということではないので、気になります。
仮に筋力低下があった場合に、障害のある筋は、手根管症候群で麻痺する部分と被るところもあります。
円回内筋が障害を受けないので、患者が回内動作の不具合を訴えないため、方形回内筋の筋力検査は忘れてしまいます。
(方形回内筋の検査は、肘を最大屈曲させて前腕の回内運動の左右差を見ます。)
方形回内筋の検査は手根管症候群を疑った場合に回内筋症候群を除外するために取らなければいけない所見の1つになります。
perfect O signについて考える
perfect O signを見て、
しっかり円が作れていない→サイドピンチ型
短母指屈筋、短母指外転筋、母指対立筋が機能していないから。
と解釈して『手根管症候群』と診断するのは正解です。
perfect O signが
しっかりと円が作れていない→ティアドロップ型
つまり、母指IP関節と示指DIP関節が曲がらず伸びた状態であれば『前骨間神経麻痺』に特徴的なものですが、『回内筋症候群』も疑うべきなのか?となります。
しかし、手根管症候群と同じく短母指屈筋、短母指外転筋、母指対立筋が
機能しないのでサイドピンチ型にもなるはずです。
回内筋症候群の絞扼部位
A:上腕二頭筋腱膜と上腕二頭筋腱の間
B:円回内筋の浅頭と深頭の間
C:浅指屈筋腱の起始部の腱弓を潜る
各部位の検査方法は、
「Spinnnerテスト」としていろんな図書に載っています。
考えれば分かる事なので、暗記は必要ないと思います。
治療法
仕事での反復動作や日常生活での動作で誘因になっているものがあればそれを直すよう指導するだけで、大抵良くなります。
通院中は、電気治療や原因となっている筋の特定ができていれば、そこへのアプローチを行います。
まとめ
→サイドピンチ型で、母指IP関節と示指DIP関節がしっかりと曲がっていたら『手根管症候群』
→サイドピンチ型で、母指IP関節と示指DIP関節が曲がっていなかったら、『回内筋症候群』
を疑って方形回内筋や母指IP関節と示指DIP関節の個別での筋力検査をする
→純粋なティアドロップ型は『前骨間神経麻痺』が考えられる