月状三角間靭帯の損傷は、TFCC損傷に合併して起こることがあります。
整形外科での臨床経験で、1例この疾患を疑った患者さんがいました。
MRIでの描出も難しく、確定とまではいかなかったのですが、TFCC損傷に合併していたものと思われました。
月状三角間靭帯の損傷とは
月状三角間靭帯の損傷は、比較的に頻度は高く起こります。
構造としては、靭帯中央部は膜様で脆弱です。
掌・背側は靭帯成分となっていて掌側の方が背側より強靭です。
その他に月状三角骨間を支持するものとして
掌側には尺骨手根靭帯、背側には橈骨手根靭帯が存在します。
stage分類
この疾患はTFCC損傷に合併して起こることも知られています。
手関節尺側の靭帯損傷にはstage分類があり、
stage1:TFCC損傷
stage2:尺側手根伸筋腱鞘の損傷
stage3:尺骨手根靭帯の損傷
stage4:月状三角間靭帯の損傷
stage5:三角有頭(有鉤)靭帯の損傷
と中枢から抹消に向かって損傷は拡大します。
単独損傷の受傷機転
手関節を過伸展で橈屈・回内位で掌側から豆状骨へ外力が加わることで受傷します。
月状三角間靭帯を損傷しても解離はせず、軸圧の負荷が加わることで月状骨は掌側回転し、三角骨は中枢へ転位します。
理学検査
ulnar snuff box(尺骨茎状突起から遠位2cmの尺側手根伸筋腱と尺側手根屈筋腱の間)に圧痛を確認できます。
月状骨を一方の手で、三角骨・豆状骨を他方の手で把持して背側と掌側に個々に揺り動かします。痛みを伴った礫音と不安定性が確認できれば陽性です。
治療
ギプス固定や装具療法などの保存療法が奏効しない場合には手術が行われます。放っておいても良くなる事は無く、痛みが続きます。疼痛発生のメカニズムは、断裂した靭帯の断端がインピンジ(挟み込まれる)されたり、不安定性による滑膜炎や関節軟骨の摩耗や変性による関節症が続発するためです。