整形外科勤務時代の会議で、下垂指の患者に対して担当した先生は、神経根症によるものと報告したところ、すぐに
「後骨間神経麻痺ではないのか」
という他のスタッフからの意見がありました。
確かにこの時は後骨間神経麻痺であったのですが、下垂指というキーワードだけですぐに後骨間神経麻痺に結びつけてしまうのも早計です。
頚部由来の下垂指もあるので、しっかりと所見を取らなくてはいけません。
特徴的な症候
①上腕三頭筋の腱反射の低下
②手内在筋(骨間筋・虫様筋)と上腕三頭筋の筋力低下
【筋力テストでの注意】
指の筋力検査は全可動域を動かすものではなく、その位置で維持できるかです。
内転筋力を診るのに、指を開いた状態(外転位)から指を閉じさせる(内転)のではありません。 and vice versa.
③肩甲間部あるいは肩甲骨部の痛みの後に、下垂指が発症する
④初診では手指の痺れと知覚低下が無いこともある。その後痺れや痛みが小・環・中指にあらわれる
⑤障害高位はC8が多く、C7は少ない。
下垂指の評価の注意
手関節の肢位によっては指が伸展出来てしまいます。
手関節を背屈させた状態では指伸筋は緩み、十分な筋力がなければMP関節0°までは伸展出来ません。
しかし、
手関節を掌屈させた状態では指伸筋は伸張し、筋力がなくてもMP関節0°まで伸展出来てしまいます。
そのため、患者さんが指が伸びないことに気づくのは遅れることがあります。
鑑別
先に述べましたが、後骨間神経麻痺との鑑別は必要になり、指の痺れと知覚低下を欠く場合には必ず鑑別しないといけません。
特徴的な症候の①〜③に加えてSuperling test陽性は後骨間神経麻痺には見られません。
そして、
C8神経根症と肘部管症候群の知覚障害の部位と障害される手内在筋も同一で、鑑別が難しいともされています。
環指橈側・中指にまで及ぶ痺れがあれば尺骨神経支配領域を外れていますし、
(正中神経領域なので)
肘関節でのtinel signやelbow flexion testを行うことによって正確に鑑別できます。