この疾患は整形外科勤務時代に2回ほど見たことがあります。
勿論、医師の診断無くしては判断はつきませんし、この疾患が思いつくのは難しいです。
1度目は、距骨の圧壊がかなり進行した例で、レントゲンを見れば距骨が病因だと気づくのですが、レントゲンがなどの画像診断がなければ分からないと思います。
圧壊が進んでいた為、患者さんは手術となりました。
2度目は、かなり年配の方で、リハビリ室で足首の痛みについて相談を受けていたのですが、足関節の関節症だから、対症療法で行くしかないというような話をしていたのですが、診察してレントゲンを撮影した結果、距骨圧壊が進んでいて、この患者さんも手術適応となり、手術をされました。
距骨無腐性壊死とは
まず、骨の無腐性壊死という言葉について、色々な意見がありますが、私は感染などによる菌の作用なく、骨が壊死するものと習いました。
ex:血液の供給が絶たれて骨組織の破壊( 壊死)が起こる
距骨無腐性壊死は、骨折後に起こるものや、血液循環不全、アルコール、ステロイド剤投与などが原因で起こるとされていますが、他に原因が無い特発性によるものもあります。
どんなん人に多いの?
性別·左右差はほとんど無く、初診時年齢は40歳以上に多く見られます。
症状
歩行時に足関節部に痛身を訴えてますが、自発痛や著しい跛行はありません。
足関節の関節裂隙部に圧痛があります。
足関節周囲に腫脹がありますが、発赤、熱感は認めないこともあります。
X線学的所見にて距骨体部に圧壊が生じている場合には軽度の背屈制限が出ます。
また、背屈を強制することにより疼痛をが誘発されます。
原因
距骨の表面は60%以上が関節軟骨に覆われています。
筋や腱の付着が無いので血管の進入路が限られてしまい、無腐性壊死に陥りやすのです。
骨折後(外傷)においては、学生時代には、距骨体部は頚部背側から骨内に進入する髄内血行のみで栄養されているので、距骨頚部骨折が起こると骨内への循環が断たれてしまい、無腐性壊死が起こると習いました。
しかし、色々な報告によると、距骨体部への血流はかなり豊富です。
これは、頚部骨折により髄内血行が遮断されるのに加え、体部が脱臼するのに伴い体部への血行が損傷されるので無腐性壊死が起こると考えられています。
血行不全に関しては、何らかの原因で血行不全がおこり、骨髄に浮腫が起こることで骨髄内圧がさらに増加し、血流がさらに減少して骨虚血になります。この結果、骨梁が壊死し、その修復過程でその骨梁が支えられる荷重以上の負荷がかかった時、軟骨下骨の骨折が起こり圧壊を生じると考えられています。
治療法
距腿関節や距骨下関節の動きを制限する足関節固定装具を着用することで、症状の軽減が期待できます。しかし、装具を着用することだけでは壊死の修復はなされないため、固定装具は圧壊の進行を予防するためではなく、圧壊の進行を遅らせるためのものとなります。
手術療法では、関節固定術が一般的となります。私が担当した患者さんも関節固定術を受けられ、リハビリによって歩様は跛行を呈さず、しっかりと歩かれていました。人工距骨も開発されており、今後の手術法の発展が期待されます。