頚部・胸・腰

第1肋骨疲労骨折

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整形外科の勤務で、診る事が無かった疾患です。

私に知識が無かったので、ひょっとしたら罹患していた患者さんはいたかもしれません。

先日に、ちょっとこの疾患いついて勉強する事があったので書きます。

 

概念

肋骨骨折の多くは外傷によって発生しますが、

外傷によらない肋骨骨折の報告も多くあります。

同一動作の繰り返しによって起こる疲労骨折は、

連続した咳、くしゃみによる強烈な筋収縮によって肋骨部でも起こります。

このような疾患は私自身も見た事があるので、稀ではありません。

外傷性を上回る頻度で起こる骨折の部位として挙げられるのが第1肋骨です。

第1肋骨は鎖骨や肩甲骨によって保護されており、

形態も短く幅広いのに加えて走行が身体の横断面に近いので外力に抗しやすい構造となっているのにも関わらず多いのです。

 

受傷機転

説1

第1肋骨には前・中斜角筋が内・外側に付着していて、

その収縮で前斜角筋は第一肋骨を後上方に、中斜角筋は内上方に挙上させます。

この時脆弱部位である鎖骨下動脈溝で歪力が生じることになります。

 

説2

第1肋骨に付着する前鋸筋も前側面から後外側に、内肋間筋は下方に向かって作用し、

この歪力が繰り返されて疲労骨折が生じるとされる。

 

説3(バレーボール)

レシーブ時:胸を左右に開き、顎を右か左に傾けた形をとるので中斜角筋が緊張し、前鋸筋との間で歪力が発生することによって。

サーブ時:小胸筋と鎖骨下筋の作用によって

 

説4(鎖骨を介した外力)

鎖骨は体幹と上肢を連結させていて、上肢の動きに連動して鎖骨も動くが、この時肋鎖靱帯で第一肋骨軟骨部と強固に固定されているので、第一肋骨の湾曲部に頻回に歪力が発生することになる

 

疫学

肋骨疲労骨折は全疲労骨折の10~30%程度で、第1肋骨の骨折は肋骨骨折の5%程度です。

 

症状

上肢の運動痛、頸部の運動痛、上肢の痺れや脱力感、鎖骨上窩の圧痛などがあり、

肩甲部痛は腕神経叢の下部神経幹を形成するC8-Th1神経根の走行が第1肋骨に近接していて骨折部が刺激となっていることと、

第1肋骨の内側に分布している肋間神経の関連痛として生じると考えられています。

原因となったスポーツ動作をしなければ、日常生活に支障をきたすことはありません。

 

鑑別診断

頸椎疾患:胸郭出口症候群

肩関節疾患:投球障害肩

 

治療

保完全に疼痛が焼失するまでスポーツ活動は中止する。

期間としては2週間以上は要するとしている報告が多い。

症状に応じてバストバンドを用いて固定する。

 

予後

予後は良好であるが、医療者の指示に従わずスポーツ活動を続けた場合に骨片の離開や転位が見られることもある。

 

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